デザインと著作権について

コピーライト

基本、アウトラインを描くだことだけのハワイアンキルトのパターンは、デザインのジャンルの中では比較的楽なものだと思っています。また、人の描いたものを見て簡単に真似ることもできますし、ちょっと変えるだけで簡単にオリジナルパターンを作ることだって出来ます。

その割にハワイアンキルトのパターンデザインは著作権についてあちらこちらで厳しい論争がなされていることに、他のジャンルのデザインも生業にしている立場から見ていて大きな違和感を感じています。著作権なんて、公にされている知的財産権である特許・実用新案、意匠、商標、四法の仲間にも入れてもらえないような弱~い権利で、描いた本人だけが権利を主張したって誰にも耳を傾けてもらえない程度のものなのに。

著作権が四法の仲間に入れてもらえない大きな理由は、お金を払って登録する必要はなく自然に著作した本人に付随するものではありますが、客観性に乏しく、自身も含めて権利を主張し過ぎると嫌われてしまうことも起こりえます。コピーライトを付ければ権利を守られるように思って居る人も多いようですが、わたくしたちデザインの業界においてもどっか3カ所変更すれば別のデザインとして使えます。というような定説があって、互いに真似し、真似されるのが当たり前。他の四法と比較しても裁判沙汰になるような案件もほとんどありません。

日本ハワイアンキルト製作所のサイトのパターン(図案)の取り扱いについて厳しい規制を設定していない理由はここにあります。パターンを描いているわたくし自身が上記のように考えているのです。現在サイトで公開している全パターン873個をすべてデザイン上、公(おおやけ)の権利を主張するために意匠登録するとなると1点あたり70,000円×873個=61,110,000円の費用がかかります。線だけで描いたデザイン(型紙)にこんな費用はかけられません。だったら多くの人のインスピレーションを刺激できるような使い方をしたほうがよくね?簡単に真似できるネタとして少しは役に立てるかもしれないな。と考えた結果をあまりお下品ではない美しいお言葉でサイトに記載して公開しているのです。

デザインにおいてモチーフを表現するということは、真似することがすべてです。モチーフを真似して形で描くことによって多くの人がアイコンのように、あっこれは亀だ。とか、プルメリアだ。という風にわかるように整理しただけのものです。亀を亀じゃない形で亀とわかるように線1本でデザイン出来るなら自分が教えて欲しい。プルメリアをプルメリアでない形で線1本でプルメリアとわかるようにデザイン出来るなら自分が教えて欲しい。ハイビスカスをハイビスカスでない形で線1本でハイビスカスとわかるようにデザイン出来るなら自分が教えて欲しい。……と何を見ても思うのです。

だからといって自身の行動やハワイアンキルトパターンのことを卑下したり馬鹿にしている訳ではありません。布を使って超リアルにモチーフを表現しているキルトの作品は素晴らしいとは思いますが、これを布で作る必要があるのか?と個人的には思います。
これと比較してハワイアンキルトのパターン(図案)はモチーフを究極に単純化し、抽象化して表現するという点において、ものすごくデザイン的だと思っているのです。また、それゆえに、誰でもが気軽に素晴らしいデザインを生み出すこともできるとも思っているのです。そして、そういうデザインを見てみたいとも思っているのです。

サイトを運営していてこの「著作権」と「オリジナルデザイン」については幾多のお問い合わせをいただいて来ました。サイトをご利用くださるお客様の動向を見ていても、ある時期ご購入いただいたあと、潮を引いたように一切ご利用がなくなり又新しい方が同じように一定期間ご利用いただきますが、また…というような繰り返しです。これは、皆さんがご自身のオリジナルデザインを描けるようになった結果、サイトの必要性がなくなったのだと、わたくし自身大変嬉しく思っております。真似することはデザインを知る上で一番大切ですし、自身も毎日何かを真似してデザインを生み出しています。そして、ご利用いただいた機会のあったお客様がどんな形であってもサイトを踏み台にしていただけたのであれば、運営している意味があるとも思っています。

いつでもどなたでも「これはわたしのものだ!」と主張することはとても重要です。この気持ちこそが、出来上がったものに強い愛着を持ち、大切にする気持ちをより強める源になると思っているからです。
自分のように、デザインを売ることで生計を立てるということを長期間続けてくると、この愛着を持つ気持ちはほとんど機能しなくなります。なので、特に、ハワイアンキルトのパターン(図柄)については著作権についてはあまり気にしなくなってしまっているのかもしれません。反対に、いつまでも主張し続けるのは過去に執着していることの現れでもあると恥ずかしく思ったりします。

それでも、わたくし自身、現在進行形で、著作権譲渡したはずもないとある会社と個人が、(ハワイアンキルトのパターンではではありませんが)勝手にデザインを自身のものとして公開し、ビジネスが行われている状態にあります。ですが争おうとしているのが著作権なだけに「わたくしのデザインであることの客観的な実証」が大変難しいことから、様々な専門家の方や文化庁、特許庁などにご相談をしながら日々準備しています。でも、このような行動はわたくしのデザインをいいと思ってくれたことの表れでもあるので、部分的には喜ばしいことかも知れませんから。最近は、別の方法で権利を守るためにNFTなんかも考えたりします。
ハワイアンキルトのパターン(図柄)に関しては、いつかご利用いただいてくださっているお客様が全員「わたしだけのデザイン」を手にされたときに、日本ハワイアンキルト製作所の役割が終わるのだと思います。その時が来るまで、今までと同じように考えながら多くの方の作品制作のお手伝いができたらいいと思います。また、その時が来ることを心から願っております。
それから、今サイトのカタログを無料で差し上げています。
本日の画像は「イラストac」様より拝借。もちろんわたくしは正規会員登録しております。

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