ハワイアンキルトの教科書 | 日本ハワイアンキルト製作所デザインノート

某有名ブランドバッグのキットを組んでいくプロセスを記事に書きましたら、キット販売にはつながりましたが、キット以上に関心を持っていただいたのが、文章の中で引用した「ハワイアンキルトの教科書」の方であったことに気づきました。おそらくまるで教科書の内容をみなさんが知っているように文章を書いてしまったことが良くなかったのかもしれません。

この本は、日本ハワイアンキルト製作所の商品の中で最も多く売れているものではありますが、キャシーさんやメグさんの本のようなハワイアンキルト作品の美しい写真は1点も掲載していません。図や文章や表ばっかりの決して楽しい本ではありません。
また、最も多くのページを割いているのは、カットの仕方についてです。日本ハワイアンキルト製作所はハワイアンキルトのパターン（型紙）や図柄を販売していますが、そのパターン（型紙）を使ってどのように布を用意し、どのようにパターン（型紙）を生地に載せてどのように切るのか？切ったトップの生地をどのようにベースの生地に載せ、パターンを入手された方が迷うことなく縫うための素材を用意するのか？ということを基本のピローからベッドカバーサイズまで説明しています。
このサイトを作る際に、型紙だけを売るというのは無責任で不親切なのではないか？サイトのサブタイトルでもある「あなたのハワイアンキルト制作をお助けします。」という言葉に反するのではないか。などいろいろと考えた結果、ひとつのまとまったカタチでハワイアンキルトの作り方を明文化しようと試みたのでございます。
これを編集した頃に、ハワイアンキルトの指導者を養成する事業を展開していた学校に通っていた方からノウハウの監修をしていただくことができたり、わたくしが自身で調べ研究したり考察したりして持っていた多くの情報などとあわせて、本にまとめることを実行しました。

紙の状態でパターンを見たときと、これを布にトレースしてみた時とを見比べると、切ってしまった布はどちらがストレートでどちらがバイアス方向になるのかすら見落としてわからなくなる場合があります。人間のすることは割といい加減で、材料についてもわかっているようでわかっていないことが多いと常に思っております。これは小さなサイズのものならそれほど大きなトラブルにはならないかもしれませんが、ウォールハンギングやベッドカバーなどの大きなサイズのものは、それこそ何がなんだかわからなくなってしまうことがあります。カットした布がパッチワークと違って１枚につながっていることが原因で触っているうちに伸びてしまったりよじれてしまったりすると、その労力だけでハワイアンキルトがなんだかいやになってしまった。ということにもなりかねません。
そうならないように、決まりを作っておけば、制作過程で自身が迷ったり困ったりすることなく、気分良く作品制作に向かうための覚え書きのようなものがあれば作品を制作する方の助けになるに違いない。そう思ってまとめたのがハワイアンキルトの教科書です。なので特別な思想はありませんし多くの指導者の方独自のノウハウや考えを邪魔するものでもないと思っております。ですが布を扱うという点では重なる部分もたくさんあるんじゃないか考えております。まっすぐ方向は伸びないけれどバイアス方向には伸びるので、上下の布目がきれいに合っていないと完成した作品は、自分が思ったのと違う仕上がりになったりする。丸く切ったのに縫うと四角く仕上がってしまうのはなぜ？これは布について知っているようで知らないことがあるのではないか？とも思ったりします。
ソリッドの生地を扱う際にアイロンをかけてしまうと今も表と裏すら見分けられないわたくし自身、常に見本を作ったりキットを組んだりする際に、教科書で決めてしまったことが常に頭の中にあるので、迷うことはなくなりました。

最初にハワイアンキルトに触れた時に、あまりに明文化された説明書や教則本がないことに大変驚きました。へえ。ハワイアンキルトって口で伝える文化なんだ～。こりゃ先生は大変だな。と思いましたし、布のカットを失敗すると完成作品に大きな影響が出るんだ。確かにカットしてアップリケしてその上キルティングするハワイアンキルトは、その過程のなかで様々な場面で布にストレスをかけるものだから、最初がちゃんとしてないと制作にかけた時間が無駄になることもあるんだ。などと。

どんな小さなキットの一部分、たとえば某有名ブランドバッグのそっくりさんキットの四隅に載せた3.8cmの円の布１つをとってもきっちり生地の向きを合わせてあります。制作する方の作業性や仕上がりを考えてかなりしっかりとしつけもかけてあります。これは教科書に理由とともに記載し、わたくし自身が決めたノウハウに従って作業しなければ、わたくし自身に対して嘘をつくことにもなりますし、何よりもご購入くださった皆様にご迷惑をおかけしてしまいます。

そうそうカットの際に中心を合わせるために入れている切り込み（開くと八つ星になります）も上下の布を合わせるための目印と考えているので特に意味はありません。八つ星については通常の幾何学的な形なので上下の布を合わせる際にも大変合理的な形なのでみなさんも採用してみてください。